ナノ分解能赤外分光分析法
物質が赤外光を吸収した時、光のエネルギーで物質分子間の運動が活発になる。それに伴い分子間に摩擦が生じ、摩擦による熱が発生する。
その熱で物質に熱膨張が起きる。O-PTIR測定原理は物質の赤外光吸収を起因とした熱膨張の大きさ(Δh)を検出するものです。赤外光源にはチューナブルパルスレーザー(波長可変パルスレーザー)が用いられ、試料の真上から試料表面に照射される。レーザーパルス幅は数ナノ秒~数10ナノ秒で、1パルスに対する分子運動と熱膨張は瞬間的な現象になる。1パルス毎に波数を変えて連続的に照射することにより、赤外吸収スペクトルとして表すことができる。
O-PTIRとFT-IR赤外分光法の違い
従来の赤外分光分析(FT-IR)透過方式は赤外光の試料への入力量と出力量の差を吸収の大きさとして表しているが、O-PTIR法は赤外光の役割は試料への照射のみで、吸収された後の光の量検出は行っていない。
赤外スペクトルと赤外吸収イメージ
試料の熱膨張変化(Δh)を検出する方法として可視レーザー(532nmや785nm)が使用される。赤外レーザーと可視レーザーは同軸で同時に試料に照射される。試料より返射された可視レーザーにはDC信号とAC信号の成分が含まれている。
DC信号は返射光の量を表し、AC信号はΔhの変化、オシレーションの振幅の大きさを表している。
DC信号から試料表面の状態(ドメイン、マトリックスや多層膜等)をイメージ化することができ、AC信号からスペクトル及び赤外吸収イメージを取得することができる。
この測定方法により500nm以下の空間分解能と波数依存性のない分解能(FT-IRは波数により分解能が異なる)での赤外分光分析が可能になる。
ラマン分光と同時分析
赤外分光分析と同時に同じ箇所、同じ空間分解能でラマンスペクトルとラマンイメージを取得。可視レーザー(532nm又は785nm)照射によるラマン散乱光をスペクトロメーター/検出器に導入することにより赤外/ラマン同時測定が可能になる。